溶接工は高温の環境下で作業をするだけでなく、ガスを使用するなど身体への負担が想定される仕事内容です。
そのため、健康の維持増進を目的に一般的な作業員が行う健康診断以外にも
特殊健康診断を受けることが義務付けられています。
今回は、溶接工の特殊健康診断とはどのようなもので、なぜ受けなければいけないのかを紹介します。
この記事を読めばきっと、溶接工が受ける健康診断が分かるのではないでしょうか。
・溶接工の特殊健康診断とは?
溶接工の特殊健康診断とは、溶接工でアーク溶接を行っている溶接工に義務付けられている健康診断です。
特殊健康診断の名称通り、通常の健康診断では行われない内容の健康診断になります。
対象は2つのタイプのいずれかに該当する溶接工です。
1つは金属アーク溶接等作業を屋外作業場で行っている、もう1つは毎回異なる屋内作業場で行う場合です。
ただ、解釈としては金属アーク溶接などを行っている方のほとんどが対象になるといえるでしょう。
そして、半年に1回の特殊健康診断をアーク溶接に関わっている溶接工の方は受けなければいけません。
・溶接工の特殊健康診断を受ける理由
なぜ溶接工が特殊健康診断を受けなければいけないのか、その理由は溶接で発生する溶接ヒュームの存在です。
これはアーク溶接で発生する金属の微粒子を指します。
発生原因は、金属のアーク溶接を行った際に溶けた金属が蒸気となり、
それが外気に冷やされることによって生じます。
金属の微粒子、しかも非常に細かなものなので体内に取り込まれやすく、
取り込まれることによって様々な健康被害をもたらす恐れがあるのです。
例えば、神経機能障害や肺がんのリスク増大なども挙げられています。
こういった理由から厚生労働省により特定化学物質に指定され、労働安全衛生法施行令、
特定化学物質障害予防規則が改正が行われました。
その改正内容として、屋内で金属アーク溶接作業を行っている作業場では、
溶接ヒュームの濃度測定を行うことや特殊健康診断の義務付けれるようになっています。
これは、TIG(ティグ)溶接やプラズマ溶接などを行っている溶接工も対象です。
・溶接工の受ける特殊健康診断の内容を紹介
溶接工の受ける特殊健康診断は、1次と2次に分けられる検診で構成されています。
1次では、業務経歴調査、作業条件の調査、溶接ヒュームによるせき等
パーキンソン症候群様症状の既往歴の有無の検査や
せき等のパーキンソン症候群様症状の有無の検査、握力の測定が行われます。
基本的に問診や基礎的な状態をチェックする内容になっています。
2次は、1次で検査が必要と思われる場合に行われる内容です。
作業条件の調査、呼吸器に係る他覚症状等がある場合における胸部理学的検査、
パーキンソン症候群様症状に関する神経学的検査、
そして医師が必要と認める場合における尿中等のマンガンの量の測定と言ったものが挙げられます。
これらの内容を最低半年に1回行い、結果は5年間保管する義務もあります。
さらに診断結果は労働基準監督署署長あてに提出しなければいけません。
このように溶接工の特殊健康診断は、ある程度労力の必要な手続きになるということを知っておきましょう。
まとめ
溶接工の特殊健康診断は、
溶接で発生する溶接ヒュームによる健康被害を未然に防ぐために義務付けられているものです。
2つの特殊健康診断によって溶接工が影響を受けた溶接ヒューム由来の健康被害を早期に発見して対策し、
業務を行うのは重要といえるでしょう。
さらにこの特殊健康診断は義務付けられたものなので、溶接工を雇用している方や溶接工の方は、
必ず実施する必要があります。