「製缶」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
しかしどのような作業を製缶と呼ぶのでしょう。
いざ説明しようと思うと困ってしまいませんか。
わかっていそうで実は意外とわかっていない言葉の意味を今回は考えていきましょう。
製缶の言葉の意味
製缶というと、以前は液体や気体を漏らさないように溶接し、水槽・タンクを製造することでした。
現在は鉄やステンレス、棒状の鋼材を切断、
あるいは折り曲げたり穴をあけたりして立体的に作ったものも製缶と呼ぶようになったのです。
製缶板金加工とも言います。
製缶製品の例
先に挙げたように、水槽・タンクはもちろんのこと、鉄骨・クレーン・船の部品なども含みます。
基本として大型のものが多いことから「板金加工」とは差別化されており、製缶板金加工とも称されます。
製缶には熟練の技が必須であり、高い技術力を必要とします。
板金加工との違いは?
板金加工でも、溶接・曲げるなどの作業は同じであり、材料も同じく金属を使用しますが、
取り扱う金属の厚さが違います。
板金加工では7ミリ以下の薄めの金属を使用し、製缶板金加工では7ミリ以上の金属を使用します。
7ミリを基準にしているところが多いようですが、各社によってこの基準は異なっており、あくまでも目安です。
また製品によっても製缶か板金加工かを分ける会社もあり、
製缶ではローラー・シャフト・架台など一般の人には耳慣れない製品が多いのに対し、
板金加工で扱われるものは自動車や家庭用品など身近なものが数多くあります。
製缶板金加工の順番
製品の図面を設計し、切断・抜きの加工がまず行われます。
これは板材から製缶に必要な形に抜く作業であり、別名ブランク加工と言います。
レーザー切断機・タレットパンチを使って加工します。
その後には曲げの加工があります。プレスブレーキなどの機器を使い、型の上に板材を置いて、
押し金型を利用して折り曲げ、必要な形状に変化させます。
タンクのような筒形の製品は、ベンディングロール機を使って丸く整えます。
曲げ加工は単純なようでいて実は繊細さを要する難しい作業で、種類には型曲げ・フランジ成型などがあります。
次に溶接加工で製品を組み立てます。
アーク溶接・TIG溶接がメインですが、アーク溶接は放電現象を用いて金属同士をつなげる方法であり、
TIGはタングステンを電極にし、無酸素の状態で行う溶接方法です。
アーク溶接は母材同士の融合が強くなり、TIG溶接は品質が高く溶接の跡も美しくできます。
すべての金属に取り入れることができるのもポイントです。
穴あけ・タップの加工は、必要な部分にボルトを挿入し固定するために行います。
主にはドリルをボール盤に取り付けて作業しますが、旋盤・フライス盤での穴あけをすることもあります。
工作機械によってマシニング加工(機械加工)を施し、素材表面を削って精度をアップします。
そして研磨加工をして、溶接跡を目立たないようにし、素材に光沢が出るように仕上げます。
バレル研磨・バフ研磨などの種類があります。
また表面・処理加工では、素材の表面にメッキ・塗装をすることで、
導電性(電流が流れやすくする)・耐熱性・耐食性(腐食に強い、錆びづらくする)等の機能を製品に与えて強化します。
装飾の意味で行うこともあり、カラーアルマイトなどの加工で色鮮やかな着色も可能です。
今回は製缶についてご紹介してきましたが、製缶加工においては溶接の部分がもっとも時間がかかり、
高い技術力が必要です。
タンクを作る場合、液体が漏れないようにするには溶接加工が第一なのはもちろんのことですし、
接合部分にゆがみができないように溶接後ゆがみを取り除く工程も大切です。
機械化が進んでいる今の時代でも、製缶での溶接は人間のスキルに依存する部分が大きくあります。